マンションの本当の寿命って何年?

近年、中古マンションを買ってリノベーションする方がかなり増えていますが、築40年とかの物件を買って大丈夫なの?って思いますよね? 今回はそんな「マンション」の寿命について解説していきたいと思います。

【 耐用年数? 】
まずインターネットで検索してみましょう、ということで「マンション 寿命」というキーワードで検索して、いくつかのW EBページを見ていると「47年」という数字をよく目にします。

え?んじゃ築40年の物件なんか買ったらあと7年しか住めないの?リノベーションでなんとかなるの?という疑問が聞こえてきそうですね。

この数字、実は「耐用年数」というもの。国税庁が建物にも「減価償却資産の耐用年数」というものを定めていて、わかりやすく言えば「マンションなどの RC造(鉄筋コンクリート造)は47年で資産価値としては0となるよ」と定めているのです。

減価償却ってなんだ?という方のために補足。
国税庁のHPには、

“事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。”

としています。

世の中のモノは全て価値があって、使用したり、年月が経つことによってその資産価値はどんどんなくなっていく。それを税金の計算に組み込むために用いられるものです。

例えば、車を新車で買って、7年後に売るとします。買った時は当然に新車価格ですが、7年後に売る時には走行距離も5万キロを超えていて、エンジンやいろいろな部品が消耗してきている。そんな車を新車と同じ価格で売ろうとしても誰も買わないでしょう。プレミアがつくような車であれば、そんな車でも高く買い受ける人もいるかもしれませんが、この「プレミア(希少価値)」を税金の計算に用いるわけにはいきません。何しろ、プレミアは予測が困難なものが多いからです。

なので、国税庁では「減価償却」という制度を用いて、モノの資産価値は年々目減りしていくものとして、そのモノ毎に細かく計算式などを予めルールとして設けて、みんな同じルールで税金の計算をしていきましょう、としているわけです。

前置きが長くなりましたが、マンションなどのRC造(鉄筋コンクリート造)は「47年」が耐用年数ということはわかりました。でもこれはあくまでも国税庁のルールに則って、資産が47年で0になるモノ、としているわけなので、実際の寿命である「物理的な寿命」ではないわけです。

では一体その寿命は何年なのか。これを紐解いていきます。

【 物理的な寿命は117年以上 】

国土交通省では「RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例(https://www.mlit.go.jp/common/001014514.pdf)」というものを公表しています。その中で、

“・「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定」飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会)
・「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」(大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」)

としています。

これが意味するのは、「少なく見ても117年」だということです。
また、117年という寿命以上に、この著書で驚くべきポイントは、その発行年。1979年に発行した著書、いわば1979年という時代のRC造の寿命の話をしているという点です。

当時からすれば既に40年以上経過した現在。今、築40年の建物は既に寿命117年以上の構造だということです。
当然、それ以降に建てられたマンションについては、日本の技術の進歩と共に精度が向上し、検査体制、メンテナンス方法など、あらゆる面で構造的に向上していると言えるでしょう。すると117年以上の寿命が容易に期待できます。

そこで、RC造(鉄筋コンクリート造)の建物で、世界最古の建物は、現在何年ほどの建物があるか、というのも気になりますよね? 論より証拠ですもんね。

【 現存する世界最古・日本最古のRC造(鉄筋コンクリート造)とは? 】

調べてみると、フランスのパリにある「サン=ジャン教会」は1904年に完成した世界最古のRC造(鉄筋コンクリート)と言われています。
2022年現在で築118年を迎えているわけです。先ほど説明した、国土交通省が発表している「117年」をついに超えた、証拠が誕生しました。

そして、実は日本にも同じくらいの築年数を迎えている「現存するRC造(鉄筋コンクリート造)」が存在します。それが横浜市にある「三井物産横浜ビル」です。この建物は1911年築で現在築111年を迎えています。これが日本で一番最初に建築されたRC造(鉄筋コンクリート造)です。今は名を変え「KN日本大通ビル(https://www.mb-f.co.jp/project/knnihon-odoribuild/)」として使用され続けています。

他にも「居住用」としての日本最古で現存するRC造(鉄筋コンクリート造)がみなさんご存知、長崎県は「軍艦島」に建っているマンション群(https://japan.googleblog.com/2013/06/blog-post_28.html)です。ここは1916年に建てられていて、現在106年を迎えます。

見方によってはボロボロに見えるので住めないとは思うかもしれませんが、「構造体」としては朽ち果ててはいないことがわかります。

海に面していて、塩害も想定されるのにも関わらず、また、誰かが一生懸命にメンテナンスをしている訳でもないのに、今にも崩れ落ちそうな建物には全く見えません。

RC造(鉄筋コンクリート造)は、日本の四季という複雑な気候に囲まれながら、もその強度で、人間以上の寿命を誇ることがわかります。

築40年のマンションでも、少なくみてもあと77年以上。そして現代におけるメンテナンスや管理技術を持ってすれば、あと110年以上は物理的に持つと言えます。
もちろん、給排水管など、構造体とは別の部分の修繕なくして「居住用」として使用し続けるのは困難でしょうから、しっかり「長期修繕計画」があって「修繕履歴」も確認できるマンションであれば安心と言えるでしょう。

いかがでしたか?
住宅購入を検討している人の多くは20代〜40代が多いかもしれませんが、その人ですらマンションから見ればまだまだ若者であり、人間以上の寿命をもつマンションが、風や雨、地震などの自然の猛威から、人間の生活や命をずっと守ってくれるのです。

安くて丈夫ならそれに越したことはないですね。

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